漣/小川 葉
 
 
 
わたしたちはいつか死ぬ
ということは
死にゆくわたしが見てるのは
夢なのではないか
 
+
 
わたしは空を飛ぶ
鳥だったような気がする

わたしはアスファルトに咲いていた
植物だったような気がする

わたしは塀に描かれた
落書きだったような気がする

わたしは消されてしまった
古い街並だったような気がする

わたしは空
だったような気がする

見あげるわたしは
わたしだったような気がする
 
+
 
お父さんが
もう一人いる

お父さんは
わたしなのに
ききわけのない息子に言う
お父さんに
怒られるよ、と

つい
[次のページ]
戻る   Point(6)