漣/小川 葉
わたしたちはいつか死ぬ
ということは
死にゆくわたしが見てるのは
夢なのではないか
+
わたしは空を飛ぶ
鳥だったような気がする
わたしはアスファルトに咲いていた
植物だったような気がする
わたしは塀に描かれた
落書きだったような気がする
わたしは消されてしまった
古い街並だったような気がする
わたしは空
だったような気がする
見あげるわたしは
わたしだったような気がする
+
お父さんが
もう一人いる
お父さんは
わたしなのに
ききわけのない息子に言う
お父さんに
怒られるよ、と
つい
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