夢でぼくは、旅人だった/あ。
 

自転車で


それは
全身がうす桃色に塗られており
まるで幸せを知った少女みたいだった
現実に乗っているものとは違い
錆なんてどこにも見当たらなかったし
ペダルはきいきいと不快な音を立てなかった


後ろには確かに誰かが乗っていた
振り返って確認したかったけど
運転中だからそれもかなわず
到着したら見てみたらいいやと
ひたすらに前進していた


ぼくらは、何処に向かっていたんだろう


いつの間にか山道にさしかかっていた
上り道の二人乗りはさすがに進まず
呼吸が苦しくなったので一旦降り
自転車を止めて深呼吸を大きくひとつ


そこで、やっと
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