かなしみとすれ違う朝/瀬崎 虎彦
長いエスカレーターのようにため息は
いつか僕の心をデッドエンドに運ぶ
ためらいはいくつもの線を残して
流れを断ち切ろうとしては断念する
かなしみとすれ違う朝
クリーム色の靄のなかでバスを待ち
まつげのうえにふわりと天使がとまり
また飛び去っていくのだ
もう孤独には耐えられそうにないからと
別れないための旅支度をして
文字通りの出発を遂げられたら楽なのだが
もう誰からも愛されず生きていくのだからと
他人事のようにあきらめてしまって
無神経な人の間で今日も仕事をする
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