本棚の記憶/朧月
行間に迷子になったままで
閉じてしまった本に
過去まで戻されました
あの日のあの廊下の隅で
自分を閉じ込めてる
自分を見つけて解放したくなった
その道を歩いて
今にいるのだけど
それでよかったのか 今だ迷いの中に
ふと思い出して行ってみる
ひとり埋めた涙の場所へ
細い木を目印にした あの誓い
取り出して大事に
胸に抱いたとたん
弾けて消える 温もりに耐えかねて
ひとりでよかった
ひとりしかなかった
そんなあの頃の思い込みに似た
硬い蕾のままの花は
この春の風に柔らかく咲いた
閉じたはずの本 風にめくられて
私の髪が さらさらとなびいてる
あきらめないこと そうつぶやきながら
立ち上がって この窓の外を
確かに見つめた
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