ふっとの/小川 葉
今日もはみだしている
淀みのようなところで
濾過された水が
次の流れへとはみだしていく
必要のないものが残っている
昔大切だったなものが
今は地名のように残っている
いつからかは忘れたけれど
私も生きていた
淀みながら水になりながら
はみだしていくことだけが
生きていくことだった
知らない駅で
知らない景色を眺めていると
この景色から
私は生まれたのかもしれないと
時々思うことがある
それは間違いではないけれど
真実でもない
地名は記憶されることもなく
走り続けていく
車窓の外を眺めながら
変わり続けていく
いつまでもここにいたいけど
濾過されて
はみだしていく
名前だけになるまで
潮の匂いがして
海が近いことを知るまで
線路は続いている
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