古い知人/小川 葉
古い知人に会った
五年ぶりに会った
会うなり僕の肩を揉んだ
思えば古い知人に肩を揉まれたのは
はじめてのことだった
古い知人は
古い知人のふりをしてる
知ってるだけだから
そんな気がすることがある
五年ぶりでも忘れない
五年もすれば人の顔なんて
平気で忘れることもあるのに
古い知人は忘れない
その上はじめて
僕の肩を揉んでくれたのだった
あるいは古い知人は
僕を誰かと間違えて
いつもその人にしてるように
僕の肩を揉んだのかもしれない
もしそうだとしたら
揉まれ損だし
揉まれるはずだった
その人の肩も損をしてる
古い知人は
気がつかずに揉み
[次のページ]
戻る 編 削 Point(1)