手紙/小川 葉
朝、目覚めると
四十歳になっていた
王選手が
七五六本目のホームランを打った
ポスターが貼られた
四畳半の部屋で眠っていたのに
昨日は小学校から帰って
庭でスキー遊びをして
夕ごはんはすき焼きだったのに
生きてる人が
生きている食卓で
幸せと不幸せについて語りながら
生きていたものを食べていた
幸せがあったのに
母さん
西暦二千年になったら
ぼくは三十歳になるんだ
苦笑していた母は
今よりも幸せで
不幸せだったかもしれない
母から手紙が届いた
朝、目覚めると
四十歳になっていた
私宛に
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