どうして忘れてしまうのですか?/真島正人
 
玩具みたいに
哀しいことってあるもんだ
それの名前は運命
雁字搦めに
人をしてしまうものの名前

Aの名前は強制力で
Bの名前は自由
Bは、自由な自分には、どんな強制力も働かないと
信じて疑わなかったけれども
いつしか荷物が
荷物引き無しで動き出すように
最後には運命が力を持って、
生き物のように自由を吸い込んだ
どこにもたどり着かない
閉じた路地に
Aを放り出してそのままにした。

Aは考えた
自由だった過去のこと
強制力はほとんど初めから
持病のように、存在していたのだ
そのことに気がつかなかっただけのこと、そして、そのことに気がつかないそれゆえに、
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