とまどいの林檎/朧月
 
もったいつけてみたのに
りんごは赤かった
むいてみたら白い肌があらわれた
赤と白のはざまには昨日があった

とまどってみせたのに
だれにも発見されなかった
土色の顔には夕日は映えなかった
どんなに叫んだところでバスは行ってしまった
とめられない時間をおもい知った

屋上から種をまく
どこかへ飛んでゆけ
根をはっていてくれ
僕がいつかその花に決着をつけに行くまで

大自然のはしくれの人間
車社会のなれのはてでしね
でこぼこのアスファルトにつまづき
見上げた空に泣け

異常気象に驚く人間
温暖化された空気に 滅亡しろ
枯れ果てた緑になげいて
も 一度土にひれふせろ

どんなんなっても生きると誓う
しぬってことがなにより恐ろしい
うそぶいた どうでもいいって言葉を
大急ぎで撤回する
いくじなしの人間

もう もったいなんかつけない
戸惑い色のりんごの前に泣く


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