一度話した言葉/キムラタツオ
一度話した言葉を自分に禁じていく
だからどんどん話せなくなっていく
言葉がなければ
話したいことも失われる
何故禁じたのかはもう判らない
静かな日々が。
楽器が弾ければよかった
言葉はなくとも
けれど体は複合の管だから
口を開けて風を吹きすさぼう
雨水が溜まって水琴に鳴らそう
耳を強く強く塞いで打楽器を刻もう
一つの体でメロディーを奏でた僕は生きていた
ヴォーカルは言葉を禁じられているけれど緩やかなスキャット
その時に歌ってくれた人を
僕は忘れない
遠くから僕を聞き当てた人
僕は複雑な管だったから
その人の歌声を
体に通した
震える僕の体という意
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