燃える秋、ススキ野 原で。/千月 話子
ススキ野 原が 北に向かって揺れている
渇水した南風 けだるい西日
東から 懇願の声が聞こえる
私もそこに加わろう
この手に 白い穂を付けて
太陽の光りがいつまでも照らし続ける体(茎)
うまく揺れない未完の体
節々が揺れるたび
葦を編んで 擬態する
そのうち 不恰好な
ススキ野 原にも
夕日は惜しみなく
赤い火を落とすのだろう
遠く雷鳴が聞こえる
明日の雨を期待し
明後日の風を待ちわびる
いつまでここに留まるつもりか と
うな垂れる 穂は
空を見ようともしない
模倣した 生魂が
一束二束と 高く背を伸ばし
北の彼方に ざわざわと
申し立てる声が聞こえるだろうか・・・・・
折れる背に水は無く
そのうち消える 我が心根に
愛しいと待ちわびる
鈴の音を 早く聞かせておくれ
そうして 空よ 空よ
空に打ち寄せる さざ波よ
侵食する夏の火の 息の根を
そろり 止めて
生かしておくれ
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