僕と猫と三日月/朧月
昔読んだ童話の中の猫だった
僕はいつもそう 肝心なことは
忘れた頃しか思い出せない
人が終わりを告げたこんな夜に
優しい猫を思い出した
猫はなにをしたんだっけな
魔法の呪文はなんだっけな
きっとハッピーエンドだったんだろうな
猫と僕は 連れ立って帰ります
だれのものかわからない道路の真ん中を
歩くなって猫がいうから 端を歩く
コンビニのおいしそうな匂いに猫が
見とれるから 一緒に夜食を買おう
いつのまにか 三日月は 笑った目の形になっていた
僕はそっと猫を抱いたままで帰ります
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