[アイデンティティ]/東雲 李葉
利口な訳を積み上げてここまで登って来れました。
出任せばっかの言葉が先立ち途方も無い世界を広げる。
自分で自分が分からぬままの足取りと、あやふやな自我の型を持て余して。
さあ、何処へ行こう。何処まで行けるだろう。
可能性は潰えるばかりで芽を出さず呼び掛けた声は遠く遠くこだまする。
綺麗事ばかりを並べてきたらいつの間にか誰も居なくて。
いざとなったら私は私と心中するほかないのだろう。
ここに立っているのは、もちろん、私自身の足なのだけど。
時々影を忘れている。存在を支える後ろ盾。
大きな口は禍の元。私の私が飲み込まれていく。
私を私たらしめるは言葉か自分か。
私が私であるために一体何が必要なのか。
私は私は本当に私なのか。
言葉はなんでこんなにも世界にあふれ蔓延るのか。
私は本当に私なのか。
私は本当は誰なのか。
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