胡桃[草稿]/小川 葉
 
葉も知っていて
データだから
胡桃なんか食べなくても
詳細について知ってるんでしょう
携帯の形態や
家族がつながっていたことも
みんな何でもぜんぶ答えられるんでしょう
まだアナログだった頃
テレビを見ていた
団欒のこたつで
まだ祖父も祖母も父も母も妹も
ぜんぶまだいた頃に
胡桃の割り方がわからなくても
おしえてくれた人たちがいた
わかるかい
データ少佐は
地上デジタルの向こうで
宇宙服を着て
ホログラムデッキの世界で
2000年代物の私を見つけると
幸せと不幸せの違いがわからないのか
首をかしげて
iモードをぜんぶダウンロードした
携帯電話になった
データ少佐は
ワンセグのチャンネルが
切り替わるまでの時間が耐えられない
ホログラムを終了すると
広大な宇宙の海に
携帯電話と胡桃ひとつが
漂っているだけだった
その向こうには
まだ青い地球が見えている
たんなるデータの集合体なのに
それすらも意味を持たなかった
恐竜たちは
まだ何も知らなくて良かった
 
 
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