一人寝/
寒雪
夜中
寝付けなくて
旅館の腐りかけた天井を見つめる
海辺向きの窓から
漣の寄せては返す
穏やかな調べ
我慢していた心のひだに染みわたる
凍りついた気持ちを静かに溶かす
いつもより広い
僕の左半分を感じて
泣くことの出来なかった僕の瞳から
冷たい涙が零れ落ちる
寂しいなんて
思うことも
口に出すこともなかった
でも今は
もう会えないきみの
柔らかな乳房を思い出して
枕を濡らしているのだ
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