石を眺める/
甲斐シンイチ
そのものが持っているものではなく『与えるもの』なのだ。
ここ数日間、私は目の前の『これ』に意味を与え続けてきた。
もう『これ』が本来何物なのかすらわからなくなってしまった。
と同時に、『これ』は私の一部であり、一部となった」
そして彼はこう付け加えた。
「君にとって私は『石』であった。しかし君が『与えた』のだ。そして私は君の一部となる」
言い終えると、そこに男の姿はなく、
私はただ、例の石ころをひたすら眺め続けていた。
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