石を眺める/甲斐シンイチ
 
とある男が
じっと石を眺めていた。
一日中である。
それこそ寝る間を惜しんで、石の前に座り徹していた。

「その石は何なのですか」

尋ねると、男は答えた。

「これは石ではない」

男は次の日も、そのまた次の日も、座り徹していた。
少しの米と、少しの野菜を食いながら
ただひたすらに眺めていた。

「その石が何なのか知りたくもないが、何故あなたが
それを眺め続けているのか、興味がわいてきたのです」

尋ねると、男は答えた。

「『観察』とは『知ること』ではない。
君にとって、私の前にあるものが石であるのなら、それはそうなのだろう。
『意味』とは、それその
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