僕は家に帰る途中だ/キムラタツオ
小さく小さく言葉を切り取っていく
言葉の断面にはその言葉が書き込まれて居るから
いくら切っても言葉は言葉だ
世界とは違うのだ
毎日とは違うのだ
一冊の詩集を小さく千切って行く
詩集はすぐに詩集ではなくなり
詩ではなくなり
紙ではなくなり
ゴミではなくなり
字ではなくなり
塵ではなくなり
点ではなくなり
最後には詩になる
夜が詩集にやって来る
ばらばらになったキーボードのキー
ちゃらちゃらりポケットに入れて
街を歩く
指先で小さく千切って
歩いた道のりに落としていく
橋の上には鳥たちが いんこ? 啄みなくしてしまう
やはり橋を越えるにはもっと変換
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