耐用年数の射程距離/真島正人
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1
名前を忘れてしまった
町を
通り過ぎて2日
私は水を汲んだ
水の中に
幾億の雨粒
2
唇が
だんだんと開いて言葉を発見する
発芽されたばかりの種のように
痛みに震え
戸惑いがちの唇
あなたのそれが
洪水のようにあふれる言葉を獲得するまで
あとすこしだろう
3
たとえ話ばかりされると
疲れると女が言って
私はその返答に困った
私はたとえ話をした覚えがないし
ただ単に主語を抜いて話していただけに過ぎないのだ
コップに半分ほど満たされていた
ソーダの泡が
ささやきを繰り返し
女がそれを口に運んだ
私は夜の静けさを激し
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