あの美しくも誰もいない川べりへ/五十里 久図
 
、側に誰かがいて、この感覚を分かち合っていたような感覚を不意に覚えるのでした。
でも、もう、それが何であったかを、彼ははっきりと思い出すことはできません。

この美しい光景を見るたび、高揚と欠落を同時に感じてしまう彼の心性は、
あるいはやはり孤独というものに起因するものであったのかもしれません。
彼はその場所に居続ける限り、永遠にその相反する感覚を抱き続けねばならなかったのです。

時折彼は何かを思い出したような、そんな気分に襲われます。
何か大切なものを忘れてしまっているような…、何か大切なものを失ってしまったような…。

彼は川べりを歩きながら、いつもそのことを考え、そして忘れるのでした。
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