み まもる/月音
その女(ひと)は 見守られている
白いベッドの上で
穏やかな瞳で 見守られている
七十を過ぎた息子の
暖かな瞳で 見守られている
薄曇りの冬空がのぞく
病室のベッドの傍で
もう
目を開けることもなく
口を開くこともない彼女は
ただ しんしんと 見守られている
ふたりの間の長い時は
知ることができなくとも
その 瞳で わかる
まもる
み まもる
みまもる ということ
ほんとうは こんなふうに
ひとは
生まれてから ずっと
ほんとうは こんなふうに
ひとは
息絶えるまで ずっと
まもる
み まもる
みまもる ということ
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