春の空/木屋 亞万
梅の花が咲き始めた
彼らは驚くほど丸い
つめたい雨の降るなかで
やわさと桃色が
暗黙の春の境界を築いていく
るるるるると鳴く猫は
スプリンクラーに驚いて
もう寄り付かなくなっていた
ただ雀らの遊ぶ庭先
彼らが生み落とした千両も
今では立派な赤い実をつけている
雨を挟んで三寒四温
行きつ戻りつ、夜は寒く
浮かれた春の来るまでは
雨雲は空に重い蓋をする
太陽はこの頃うまく回れない
そんな日々でも春は
いつの間にか僕らの隣に
そっと座り込んでいて
みんなの話を聞いている
いつものおおらかな笑顔のまま
満開の桃色の花を纏って
春は風を浴びているのだ
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