異邦人/さき
硬い
石の群れに
たまに
私も呼吸を忘れる
人肌の
暖かさも
しばらく
思い出していない
交わるようで
交わりきらないのは
きっと
全てのことに当てはまるようで
母の胎内を懐かしいと言えない
不幸と
あの穏やかな場所を忘れて
悲しみや
苦しみばかりを
故郷とする
業を
いつか
誰かが
抱きしめてくれるのだろうか
眠る以外は
思い出している
いや
思い出さないようにしている
ここにいることの
必然と偶然
戻りたい故郷は
もう
どこにもないのだ
と
今日
すれ違った風の匂いが
遠いあの町の匂いだった
でも
それは
母を待っていたバス停だったのか
弟と遊んだ野原だったのか
彼と走った河原だったのか
一人で泣いた街角だったのか
もはや判別がつかず
どこにもない記憶が
懐かしいのだという
分け合うことのできない
当てどころのない思い
そして
また
一人きり
を味わう
今年も
私に
私だけの
あの
春が
来る
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