亡霊/瀬崎 虎彦
孤独を研いで研いで研いで研ぎ澄まして
誰一人いなくなってから僕は
ヨーロッパへ向かう飛行機に乗る
後に思い残すことはもう、ない
まぶたの裏に懐かしいバラハス空港を思い描く
地下鉄に乗って移動する自分を想像する
僕の魂が半分の重さしかないというのは
あまりにも当たり前すぎる国際的な事情だ
僕の心 残像のように街の景色に溶け込んでさまよう亡霊
窓の外で同じ背格好の神経質そうな愛憎半ばする亡霊
君の知らない僕がかつて生活し亡霊は今なおそこにいる
けれど僕はスーツケースにかならずその半身を取り戻す
そうしなければ今ある場所から進めない気がするのだ
君が心を縫い付けたこの体に僕はもうひとつの半身を取り戻してくるよ
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