レンガ/イシダユーリ
階段を降りて
坂道を下ったら
ともだちがきえていた
目の前を
横切る電車に
乗っていったのだった
老夫婦が手をつないで
それを見ながら
歩いていた
Aを語るB
Bを語るC
Cを語るD
と
吐き気はつのり
もう
夕方だったんだな
帰っていく
はずだ
彼らも
壁に
思いきり
顔や体を
打ちつけるまで
壁に
気がつかないのは
生きているからで
めいいっぱい
ひろげた
四本指を
窓にはりつけて
どうか
わたしいがいの
ものが
ここに
のこりますように
と
願ってばかりいる
制服姿しか
思いだせない
同級生が
黒髪のまま
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