温度/真島正人
海の稜線が光ると僕は
それがある種類の
誘導光だと
感じる
あの光が誘導する物事は
とても難しいのだけれども
僕たちの大事な部分と結合している
そんな時間とはまた
違う別の時間に
遠くの町は美しい夕暮れに飲み込まれている
生きている遺跡のような姿で
喫茶店の中の厨房で
まだ若いパティシエが
今日のタルトに苦心をして
他のいろいろな問題事も
ケーキのクリームの中に滲ませている
彼の瞳に虹が見える
虹は
彼のうつろの妄想の産物
そして
深い海の底で
ときには秘密が暴かれている
こんな時間にも
僅差で
不幸を免れた麦畑が
刈り入れに静かに従うとき
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