雪だるま/小川 葉
今日は晴れたので
君と散歩に行く
君は摂氏三度
手をつなぐと
昨日よりもあたたかい
こうしてるうちにも
春が近づいている
なるべくそのことには触れないように
君の手を握る
昨日までのことを語り合い
語り終えると
君の手は摂氏七度
冬の日差しが強い
昨日までかろうじて
白い雪の形をしていた
君が僕の掌でとけて
液状になって
滴り落ちている
やがて日が落ちて
路面が凍りはじめると
作られたまま捨てられた
小さな雪だるまの残骸を
君は大切そうに抱え
どこか遠いところへ運んでいく
摂氏零度
風がつめたくて
君と手をつなぐことは
もうできない
その後ろ姿を見送っている
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