生きる/攝津正
 
自動的に地獄行き特急グリーン車を予約。だから「あ、みんないっかいどんなもんか地獄に行ってみたいんだな」と解釈する。まあ旅行は自由ですので。帰ってくるのキツいけどね。帰ってこららればラッキーだけどね。
 攝津にとって、倉庫内労働者として働く事は易しく又健全な事だった。前田さんの甘言に乗り芸術家振る事は「地獄行き特急グリーン車を予約」することだった。しかも終点は死、片道切符の。だが、前田さんが語ったように、この地獄行き特急グリーン車に乗車する事は「運命」だった。前田さんも同乗している。恐ろしい事に。
 世間では通常こういう関係を相互依存と言うのだという事位は攝津にも分かっていた。だが、自分がそういう関係に深入りするだろうというのも宿命的に自覚していた。その帰結が悲惨なものであろうと、行く所まで行かねばならぬ。何故なら「旅行は自由」なのだから。

〈了〉
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