生きる/攝津正
 
ていた。深刻だった。気の毒だと思った。攝津は、自分は本当に恵まれている、と深く感じ入った。攝津の悩んでいる問題は、CD買い過ぎで破産寸前とか、軽過ぎる、笑いの対象にしかならぬ。今派遣切りに遭ったり派遣村に集まったりしている人達は本当に生活が大変なのだ。攝津のようにまさに自己責任でちゃらんぽらんしている駄目人間とは違うのである。攝津は、両親が健在だから、今の生活を維持出来ているが、もし万一の事があったら…。それは考えたくなかったが、いずれは必ずやってくる現実だった。

 攝津に、『重力』編集会議の鎌田哲哉から「寄稿要求」があったのは数年前の事である。鎌田は、攝津の事を人間の屑と罵倒しながら、Q-
[次のページ]
戻る   Point(1)