生きる/攝津正
 
が相手に受け取られる、というのは新鮮な楽しみだった。NAMで働けばQはどんどん入ってくるし、それを使うのは楽しかった。倉数さんが言うように名誉、というか精神的な楽しみに過ぎぬとしても、それは充実した体験だった。
 攝津が、柄谷祐人、後藤学、福西広和の不正高額取引に激怒したのは、まあママゴトかもしれぬがお互いにリスペクトを保って成立していた「Qの世界」を引き裂き破壊する企てだと感じたからだった。信頼を破壊する事で、Qの価値を下落させる。意図的な地域通貨インフレ。柄谷行人がやった事も同じだった。信頼を引き裂く事でQ自体の価値を下落させる。信頼通貨という幻想を破壊する。幻想の破壊は必要な事だったのか?
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