生きる/攝津正
けのミュージシャン生活は、無理だろう。だから、パートタイマーである他は無いのだ。選択肢は無い、と攝津は考えた。
極左党派の活動家は、評論家の吉本隆明の影響を受けた者らの事を自立豚と呼んで貶めたが、自分はそのような豚だ、と攝津は考えた。尤も吉本の語る「自立」の意味を深く了解した訳では無かったが。裏柳生タニケンは攝津が活動家から「脱落」したと言ったが、落ち零れは半ばは意志的な物であり半ばは必然的な物である。生活条件が、攝津から活動に必要な時間や体力を奪った。攝津はひきこもりがちになった。仕事に行く他は家から余り出なくなった。別にデモに行くより「昼寝」していた方が良いと言う吉本に影響された訳でも
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