ぐあらぐあらの街/朧月
 
ガラガラか
もしくは ぐあらぐあら かもしれない老人の
荒れた咳払いがする
すすけた匂いがする
ここは 老人の街

若者は ばかものだなんておっさんが言い
しにかけって よばれているのも知っている
全部 相手が路地にきえっちまってから
かすれ声で 投げつけている

あほか って一言で愛したり
蔑んだり 捨てたり拾ったり

あれ って指差せば 見当違いでも
お金次第でどうでもなる

そんな街の真ん中の隅っこに私は住んでいる
長生きのこつばっかりきかされて
朝露みたいに消えたいと願ってる

老人の青春なんてどうでもいいけど
なんとなく よかったんかなって思うのは
この ぐあらぐあら声のおっさんが
あんときゃ よかったって言いながら
ぴっかり光る目になるから

おい と呼ばれてきこえないように
くそじじいと つぶやいて はーいという
ぐあらぐあら声がきこえるうちは
このすすけた街も消えないだろうよ


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