星空を見上げる/フミタケ
 

車を走らせていると路面には
頭から脳漿を垂れ流した犬が
しんでいるのをよけつつ
あたらしい仕事を探そうかなどと
ニールヤングを聞く
ちょうどいい音楽だ
ちょうどいい音楽なのに
「heart of gold」
なんて言葉を歌う
「おやすみ」だけをかわしつづけて
ちいさなサヨナラをくりかえしては
何かつなぎあわせようとしているの
体もつなぎあわせたいのだろうに
見上げれば今夜は星が綺麗だよ
かなしみを生たまごの殻のように抱き
マンドリンの響きが小さく轟いてる
音速で飛ぶジェット機の爆音よりも
深く突き抜け轟いていく
ささやき
もう死んでしまったあの人が

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