明日と言う名の向こう岸へ/みずまくら
今日と明日を隔てる
月明かりの海峡
私は明日と言う名の向こう岸へ
小さな渡し舟に乗って
たどり着こうとしている
波任せの幸せな舟の旅
舟べりを叩く波の音が
たっぷんタップンと
耳もとに優しく心地いい
明日と言う名の
手付かずの
希望に満ちて幸せそうな向こう岸
私はその岸に早く着きたくて
何故か「漕ぐべからず」の
張り紙のあるその舟の
櫓を漕いでしまった
ふわりと大きく舟が揺れ
タップンと水の音がして
目が覚めた
目の前の
ゴムのひとつ目フックが揺れている
そうだ私は
風邪を引いて臥せっていたのだ
カーテンの向こうに
未だ朝の明かりは見えない
目を瞑り耳を澄ますと
耳もとの水枕の
ゴムを叩く水の音だけが
夜の闇に寂しい
何時の間にか眠っていたのだ
目を覚ますと
カーテンの向こうに朝の光が見えた
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