アッキーの声を聞きながら / 奥主 榮/鵜飼千代子
そこに虫がいるから
歩く 止まる 歩く 止まる 歩く 止まる
を しなければならないのだと
アッキーは言う
歩いては止まるのではなく
歩いて 止まってでもなく
歩く 止まる 歩く 止まる 歩く 止まる
という言葉を 何度も何度も
けたたましく繰り返すアッキーに
僕の目よりは 一匹の虫を
ずっと大きく見ているのだと思う
お母さんは アッキーのそんな命令に
もう慣れっこになっているのか
知らん顔して歩いている
僕は
歩く 止まる 歩く 止まる 歩く 止まる
まではしなくても
そういえば 足
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