アッキーの声を聞きながら / 奥主 榮/鵜飼千代子
 
  そこに虫がいるから
  歩く 止まる 歩く 止まる 歩く 止まる
  を しなければならないのだと
  アッキーは言う

  歩いては止まるのではなく
  歩いて 止まってでもなく
  歩く 止まる 歩く 止まる 歩く 止まる
  という言葉を 何度も何度も
  けたたましく繰り返すアッキーに
  僕の目よりは 一匹の虫を
  ずっと大きく見ているのだと思う

  お母さんは アッキーのそんな命令に
  もう慣れっこになっているのか
  知らん顔して歩いている
  僕は
  歩く 止まる 歩く 止まる 歩く 止まる
  まではしなくても
  そういえば 足
[次のページ]
戻る   Point(2)