生誕前夜からの手紙/朧月
 
生まれる前日の私は
今日の日のことを知っていた
今日に憂いて泣くことを
先に私は知っていた

愛を求めて痛むことも
求めぬ愛に泣くことも
先に私は知っていたのだ

父よ母よ
あなたがあなたの想いで
私をつくりたもうと
私は私の想いで生まれてきたのだ

いかなるしうちにあおうとも
今私がここにあることは偶然ではない
私という生命は生かされた

私は滅びないことを知っていた
そしてこの先に起こるであろう日を知っている
ならば
今 恐れることはなにもない

驚くことはあったとしても
ただ忘却されていた手紙が
ふいに届くのだろう日には
そうであったか
と しみじみそれを読み上げればいいのだ


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