秘密荘厳大学文学部/済谷川蛍
 

 「私、中学生のときにヘッセと出逢ったんですけど、今まで周りにヘッセについて語れる人がいなくって。レポートにしようかなって思ってるんですけど」
 私はこのテの中学や高校の頃に読んでファンになったという読者を信用しないタイプの人間だった。この世の果ての目も眩むようなリアリティに心底震えた経験があるのか、と問いたかった。私はどっから見ても将来有望そうな小娘に言い放った。
 「おっ、お願いします!」

 談話室こと自習室で――。
 
 作務衣姿の学生がイスを並べてベッドを作って寝ている。PSPで遊んでいる学生もいた。私たちはなるべく人の少ない場所を選んで座った。
 「栂尾さんはヘッセの
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