こんにゃく(に)/小川 葉
ってしまったのだろう
間奏になると
君の手元にカメラが迫る
迫りすぎて
こんにゃくにライトが反射して
もう何も見えなかった
それから僕はひさしぶりに
埃のかぶったこんにゃくを
押入の奥から出している
生きていれば
誰もが思う
何かを間違えていたのかもしれないと
間違えたまま
ここまで来てしまったとしても
というような気持ちになって
下手くそなこんにゃくを弾きはじめる
そのよさは何かと
妻と息子に問われることもあるけれど
何もこたえられなくて
それでいいと思っている
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