こんにゃく(に)/小川 葉
 
 
 
ミュージシャンを夢見て
君はひとり
こんにゃくを背負って
旅立っていくのだった

あれからどれくらい経つだろう
生きていれば
誰もが思う
あの日
何かを間違えていたのかもしれないと

ミュージシャンも
夢も
こんにゃくも
今はとてもありふれた
言葉になってしまっている

テレビを見ると
いい歳をして
知らない若い歌手の背後で
君はひとり
こんにゃくを抱えていた

あの日君がおしえてくれた
こんにゃくの弾き方
激しくて
壊せるものは壊してしまえ
という
まだ君らしかった君は
もうどこにもいない

いったい僕らは
何を背負って
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