ひび割れ/朧月
 
割れた指先に機械油が染みて痛いという
まるでヒトゴトにそれを聞く

吹き荒れる風は私の首筋を叩き
ごっとりと前のめりになる背中になる

ふと
目の前にあのひび割れた指先が現れた
びしゃびしゃと機械油がかかりそれでも
されるがままになっているあの指先はあなたのだ

こじゃれた店でお茶でも飲もう
なぜか注文したものがこない
イライラが指からこぼれそうになった瞬間
私の指とあの指先が入れ替わる

かたり コーヒーが届き
伸ばす 指に
きりきり きりりり と痛みが走る

痛いとは い た い ではない
そんな気持ちが胸にせまり
むせながらコーヒーを流し込み

あわててレジへ向かう私は
なぜ 今なのか と
今朝を思い出しながら それでも急いだ


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