回想。/佐藤章子
 
私は泣いてはいけない
もうすぐにこの押し込められた手首は星になるのだから

言葉にならずとも指先に溢れたその
きれいなものを並べたというならば
この奥底に沈んだ藍色の呼吸は何に例えればいいの

指先からゆっくりと広がるさよならの答えに
きらきらきらと私さえも知らない誰かがうつむき
曲がらないことが正しいとは言えない、と

いつも君の声を真似ていたのかな
連なることのない羅列を私だと言っていたよ
一つずつ沈んでゆく欠片に
消えてしまった色を着けたかっただけなのに

早く前に進まなきゃ

私の身体からは腐敗した香りがする
首の後ろからこぼれた視線に名前をつけて
運命線にそって手をひろげて
この青空の中心のふりをした

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