こんにゃく/小川 葉
今すれ違った人
こんにゃくじゃなかった?
休日の散歩道は
いつもそんな母の
一言ではじまる
そう、今の人はこんにゃく
僕と母さんみたいにね
安心した母が
少女みたいに笑ってる
手をにぎってあげると
むかしみたいに
すべすべして
ところどころざらざらしてる
こんにゃくだから
散歩を終えて家に帰ると
草刈りを終えた父が
額を汗で光らせて
少年みたいに笑ってる
こんにゃくだから
今すれちがった人
みたいな顔をして
僕もこんにゃくのふりをする
二人にとって
子供はいくつになっても
子供なのだから
こんにゃくが
こんにゃくだと知ったのは
きっと僕に
父と母がいたから
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