影のない女/月乃助
 
{引用=

とがった影は、みすてられ
切り取る冬の陽を証明する
見上げる円錐のモミの木から
どこまでも つらぬくように
まっすぐに伸びた

疑うこともせず、迷いもせずに
影を作り出し専念するなら
誰もが当たり前のように通り過ぎても
誰も気づかぬふうに歩き去っても
この地上に張り付いたまま
声さえあげずに、ただじっと
だまったまま、

その形を時に
わずらわしそうに変えながら、

影をなくした
もうずっと昔のはなし
ファルコンの言いつけどおり
あたしが影を手にいれなければ、
夫は石になるよ
それが、掟ならしかたがない

あふれるばかりの
冬の陽の
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