塩水とピーナツ/真島正人
 
前景化された思考などただの屑だ
弁当箱の隅をつつきながら
やせこけた男がしゃべっている
はて、はてはて、これは
イッタイいつの出来事だったか
胸の奥のわずらわしさに突き動かされ
思想焼けを引き起こし
浮ついた唇が
泡のような言葉を次々と吐くのだ
あの頃の独特の
ぱしぱしとぶつかるような
空気の音を携えとして……
安いものばかりでこしらえた
弁当には
人参、ごぼう、茸
大量のキャベツ
空き教室を利用していた昼食では
ラジオを聴くことを日課としていた
途切れ途切れ流れてくる
ピーターフランプトンの歌声と、
言いようのない心のうずきは
同じ言語を持ちそうで

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