塩分濃度/小川 葉
これからはじまることは
これまでにもあったこと
出会いと別れをくりかえし
僕らはまた少し
遠いところへ歩いていく
足がなくても歩けるのだと
あなたは言った
手がなくても
手を繋ぐことができるのだと
あなたは言ったけれど
まだ手と足があるから
僕には本当のことが分からない
本当はそれ以外が
ないのかもしれないのに
手と足だけになって
歩いている
あなたと手をつなぐと
それがあなただとわかる
それはきっと
すてきなことだ
これからはじまることは
いつか死んでしまう
僕が見ている夢のようなもの
だとしたら
頬を流れる
涙の塩分濃度だけが
僕と命を繋ぎとめている
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