ディープブルー・レクイエム/岬かおり
ルが、
息絶えた彼女の前でにっこりと笑い、
シャッターを切る。
(帰りたいだろうに。)
私もケータイのカメラを向けていたから、
同じ穴のムジナ。
ただ、
死して尚閉じられることのない彼女の目は、
哀しいほどに優しかった。
哀しいけれど優しかった。
なんて、
捕鯨に反対する訳でもないし、
クジラの肉を喰らったことだってあるのだけれど。
近いうちに彼女は、
海底へと埋葬されるのだという。
そこが彼女の望んだかつての海であることを、
願わずにはいられない。
(帰れるといいね。)
とても、勝手だね。
背を向けた砂浜で、
小さな海色のシーグラスを拾った私は、
その足で、
古びた市営プールへと向かった。
戻る 編 削 Point(2)