憧憬/真島正人
 
これだけなだらかな
流線型の谷を下るあいだに
私はすっかりと忘れてしまっていたのだ
これが谷であるということを
私は視覚的な美しさを楽しみ
そこにはすべてがこめられていると思い込んでいた
それもある意味では
正だ
目で見るもの以上のことを
人はつむぐことが可能だろうか?
可能だという人々はもちろんいるし
私も否定したくないが
私はいつもこういうことにしている
「よくわからない」




昨日
不意に目にとまったものは
小さな胞子を震わせている
茸の傘だった
私はそれを拾い上げようとした
それは
私の中で震えているさまざまなおびえの形と
とても似
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