愛の贈り物/ありす
おじいさんは杖をやっとの思いで丘を登った
家を出たときはまだ3時だったのに
今はもう夕日が丘の上からきれいに見える
おじいさんの妻であるおばあさんは
長い間病院で入院している
何かの衝撃で記憶を失ってしまい
おじいさんまでも誰だか分からないのだ
それでもおじいさんは
毎日毎日おばあさんのところへ通い続けた
足が痛くてよろめきながらも
しょっていた小さな椅子を肩から降ろして
夕日の方にキャンパスを立てた
絵の具を出して
オレンジ、赤、黄色。
老眼鏡を着けたりはずしたりしながら
塗って塗って塗って
ようやく出来上がったが何か物足りない
風景
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