メルヒェン/千月 話子
 
白いカーテンの向こう側
夜空が シャラン と鳴ったみたい

「あら、なんだか少し風が涼しくなってきたわ。」と
裾が広がるピンクのエプロン 軽くつまんで
フワリ 子供部屋に飛んで行く
ムテ・マリア(マリア母さん)

細く開いた窓を閉じて
ふと 振り返る目の端に
フルムーンと ほうきのシッポ
黒猫のライラの金色の目が
眠そうに あくびするのよ

物音にも気付かない ピピは
小さなベッドでスヤスヤと寝息を立てているので
ムテ・マリアは彼女の柔らかい頬に手を添えて
丸いおでこに キスをしてね
「おやすみなさい。」と
小さな羽根布団を 掛け直して
クルリ 出て行くのよ
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