死の伝染/yumejiki
萎れた木から一匹の羽虫が飛んだ 羽虫は雨に濡れて地に堕ちた
泥水の中でも奴は生きる しぶとく生きる 足が蠢いている
背中の夥しい数の斑点は死の象徴 色濃く鈍い色彩を放ち
羽が濡れ 長い時間をかけ 雲が全て消し飛んでとき
何かが姿を表した 奴は次第に足先から鈍くなり
やがて膠着した 膠着した奴は一体何処に行くのだろう
酷くだるくて眠い朝 頭を揺すると耳鳴りがした
逆らえば逆らうほど それは酷くなり 寒気が硬い鳥肌をつくった
激しい混乱の最中 耳の中を穿ってみると 奴が姿を現した
耳糞に紛れて成長した奴を もう少し見守るべきだったのかもしれない
絶えきれず 私は奴を爪で弾き
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